この記事の要点(30秒サマリー)
– 養育費確保の連携には、啓発型・委託型・補助型という大きく3つの形があります。
– チャイルドサポート(法務大臣認証ADR機関 第184号)は現在 6自治体(うるま市・磐田市・山形市・南さつま市・戸田市・守口市)と連携中。
– うるま市では、市民課(離婚届配布)→子ども家庭課(状況別に対面案内)という窓口動線まで作り込んでいます。
– 自分の自治体に当てはめるときは、「まず啓発から、効果を見て補助・委託へ」という段階設計が現実的です。
連携には「3つの形」がある
養育費確保の自治体連携は、一つの決まった形があるわけではありません。自治体の体制・予算・課題感にあわせて、大きく3つの類型から選べます。
① 啓発型。 離婚届交付窓口でのチラシ配布、特設サイトでの情報発信、職員研修、広報誌への寄稿・監修などを通じて、「正しい離婚=書面で取り決める」ことを住民に広める形です。追加コストが小さく、最初の一歩として取り組みやすいのが特徴です。
② 委託型。 養育費確保の支援業務を専門機関に委託する形です。より踏み込んだ相談対応や、当事者支援の実務までを連携先が担います。
③ 補助型。 こども家庭庁「離婚前後家庭支援事業」の補助を使い、公正証書作成支援・養育費保証支援・ADR活用支援などの費用を補助して、当事者負担を軽くする形です。
多くの自治体は、この3つを組み合わせ、「啓発から始めて、効果を見ながら補助・委託へ広げる」という段階を踏んでいます。
チャイルドサポートが連携する6自治体
チャイルドサポートは現在、6つの自治体と連携しています。うるま市・磐田市・山形市・南さつま市・戸田市・守口市です。各市では、離婚啓発の実証や養育費確保の取り組みを進めており、その成果や知見を、他の自治体でも再現できる「連携モデル」として磨いています。
こうした取り組みは外部からも評価されています。官民共創型アクセラレーションプログラムでの優秀賞、AICHI NEXT UNICORN LEAGUEでの優秀賞、内閣府沖縄総合事務局によるアクセラfor沖縄の最優秀賞など、複数の受賞実績があります。
事例:うるま市の窓口動線
なかでもうるま市は、窓口の動線まで具体的に設計した先行事例です。
流れはこうです。住民が離婚を考えて市役所を訪れ、市民課で離婚届を受け取る。その際にチラシで「書面作成の重要性」を伝え、支援サービスを案内します。さらに、子ども家庭課が、当事者の状況に応じて、無料電話相談・チャイルドサポートサイン(電子合意書面)・養育費保証などの支援を対面で説明します。
つまり、「離婚届を取りに来た瞬間」という、当事者が最も支援を必要とするタイミングを逃さず、適切な支援につなぐ動線が作られているのです。これは、単に制度を用意するだけでなく「どう届けるか」まで踏み込んだ設計であり、他自治体にとっても参考になります。
「届ける」動線の作り方は 制度を作っても使われないのはなぜか で詳しく解説しています。
各市の共通基盤:自治体別ガイドブック
連携自治体には、その市に最適化した「自治体別ガイドブック」を用意しています。市の補助制度、公証役場の場所やアクセス、相談窓口、地元の弁護士会・行政書士会へのリンクまで盛り込み、行政・民間・裁判所が提供する離婚情報を立体的にまとめたものです。
住民が「自分の住む市の名前」で検索したときに、その市に合った正確な情報へ迷わずたどり着ける——この「地域に根ざした情報の受け皿」が、啓発の効果を実際の行動につなげます。
「実証 → 委託 → 補助」へと育てる
連携は、一度に完成形を目指すものではありません。多くの自治体は、段階を踏んで取り組みを育てています。
最初は、無償の実証から。啓発チラシ・特設サイト・職員研修といった、追加コストの小さい取り組みで、住民の反応や窓口の手応えを確かめます。次に、手応えが見えてきたら、委託や補助メニューの導入へ。こども家庭庁の補助を使い、サインの無償提供・ADR活用支援・養育費保証支援などを整え、当事者負担ゼロの仕組みに近づけます。
この「小さく始めて、データを見て広げる」進め方は、財政リスクを抑えながら、庁内の合意も得やすいのが利点です。先行する連携自治体も、おおむねこの道筋をたどっています。
第三者評価という裏づけ
「民間との連携は大丈夫か」という不安に対して、第三者からの評価は一つの安心材料になります。チャイルドサポートの取り組みは、官民共創型アクセラレーションプログラムでの優秀賞、AICHI NEXT UNICORN LEAGUEでの優秀賞、内閣府沖縄総合事務局によるアクセラfor沖縄の最優秀賞など、複数のプログラムで評価を受けてきました。加えて、内閣府の休眠預金活用事業の投資先にも選定されています。
こうした外部評価は、「実績のある相手と組んでいる」という説明を、議会・庁内でしやすくします。
ガイドブックの中身
連携自治体に提供する「自治体別ガイドブック」は、単なる会社案内ではありません。その市の住民が、離婚にまつわる選択肢を立体的に理解できるよう、(1)自治体の支援や窓口、(2)公証役場のアクセス、(3)認証ADR機関の支援、(4)裁判所の離婚調停——という、行政・民間・裁判所のそれぞれが提供する情報を、中立的にまとめています。
これにより、住民は自分の状況に合った道を自分で選べます。特定の一社に誘導するのではなく、選択肢を広げる設計であることが、行政が安心して住民に案内できる理由になっています。
検討する自治体が最初に確認したいこと
事例を自分の自治体に当てはめる前に、次の点を確認しておくと検討がスムーズです。自治体内のひとり親世帯数と離婚届の件数、養育費に関する相談がどの課に来ているか、既存のひとり親支援・子どもの貧困対策の枠組み、そして補助事業の予算化スケジュール。これらを押さえたうえで、「まず啓発から」始めれば、無理なく一歩を踏み出せます。
自分の自治体に当てはめる視点
事例を見るときに大切なのは、「うちの自治体ならどう始めるか」に翻訳することです。次の問いが手がかりになります。
まず、どのタイミングで住民と接点を持てるか。離婚届の交付窓口は、どの自治体にも共通する強力な接点です。次に、どの課が主体になれるか。子ども家庭課・市民課・ひとり親支援担当など、既存の体制のどこに乗せるか。そして、まず何から始めるか。多くの場合、低コストの啓発(チラシ・サイト・職員研修)から始め、手応えを見て補助・委託に広げるのが無理のない順序です。
規模の大小は障害になりません。小規模自治体は件数が少ない分、一件ずつ丁寧に支える進め方が向いており、予算規模も小さく済みます。
全体像は 自治体の養育費確保 完全ガイド、進め方の費用面は 補助金活用ガイド をご覧ください。
規模別の進め方
自治体の規模によって、無理のない始め方は少しずつ異なります。
政令市・中核市など規模の大きい自治体。 離婚件数も多く、効果が数で表れやすい一方、関係課が多く調整に時間がかかります。まず一つの区・一つの窓口でパイロット的に始め、型を固めてから全体に広げると、調整負荷を抑えられます。
一般市。 市民課と子ども家庭課の連携が組みやすく、うるま市のような窓口動線を比較的早く作れます。離婚届窓口を起点にした啓発から始め、補助メニューへ広げる王道の進め方が向いています。
町村・小規模自治体。 件数は少ないものの、一件ずつ丁寧に支えられるのが強みです。予算規模も小さく、低コストの啓発と無償の職員研修から始めれば、ほとんど負担なくスタートできます。
いずれの規模でも共通するのは、「離婚届窓口という共通アセットを起点に、まず啓発から」という出発点です。
問い合わせから連携開始までの流れ
検討を始めるとき、実際の進み方のイメージがあると安心です。一般的には、まずお問い合わせ・情報交換から始まり、他自治体の事例や弁護士による職員研修の紹介を受けます。次に、自治体の課題・体制にあわせた連携の形(啓発型・委託型・補助型のどこから始めるか)をすり合わせ、無償の実証や啓発から着手します。手応えを見ながら、補助メニューの予算化・本格連携へと段階的に広げていきます。チャイルドサポートは自治体負担が発生しない形での連携を志向しているため、最初の一歩は低リスクで踏み出せます。
よくある質問(FAQ)
Q. 養育費確保に取り組む自治体はどこですか?
チャイルドサポートは、うるま市・磐田市・山形市・南さつま市・戸田市・守口市の6自治体と連携しています。国1/2+自治体1/2の補助制度を整える自治体は全国200以上に拡大しています。
Q. 連携にはどんな形がありますか?
啓発型・委託型・補助型の3類型があり、多くの自治体はこれらを組み合わせ、啓発から段階的に広げています。
Q. うるま市では何をしていますか?
市民課が離婚届配布時にチラシで啓発し、子ども家庭課が状況別に無料電話相談・サイン・養育費保証などを対面で案内する窓口動線を整えています。
Q. 小規模な自治体でも取り組めますか?
取り組めます。件数が少なければ予算規模も小さく、低コストの啓発から始める進め方が向いています。
Q. 他自治体の取り組みを詳しく聞けますか?
はい。お問い合わせいただければ、他自治体の取り組みや、弁護士による職員研修を含めてご案内します。
この記事の著者:佐々木裕介(弁護士/株式会社チャイルドサポート 代表取締役。法務大臣認証ADR機関 第184号)
※掲載している自治体名・取り組み内容・受賞歴は記事作成時点の情報です。各自治体の最新の取り組み状況は、各自治体の公表資料をご確認ください。
