養育費確保事業の効果はどう測る|KPIと評価指標の設計【自治体職員向け】

この記事の要点(30秒サマリー)
– 効果は 先行指標(活動量)と成果指標(結果) に分けて測るのが基本です。
– 先行指標=チラシ配布数・サイト閲覧・相談予約・サイン作成・保証加入。成果指標=取り決め率・受給率・保証継続率。
– 成果は時間がかかるため、まず先行指標を管理し、成果指標は四半期・年単位で評価します。
– GA4のイベント計測など、最初に「測れる土台」を作っておくことが、議会説明の説得力に直結します。

なぜ「測り方」を先に決めるのか

予算を取って事業を始める以上、「効果があったのか」を説明できなければなりません。しかし養育費確保は、成果(受給率の改善)が表れるまでに時間がかかります。だからこそ、最初に測り方(KPI)を決め、測れる土台を用意しておくことが重要です。後から「データがなくて効果を示せない」となるのが、最も避けたい事態です。

ロジックモデルで考える

効果測定は、「活動 → 結果」のつながり(ロジックモデル)で考えると整理できます。

養育費確保の取り組みは、おおむね次の流れで成果に至ります。

啓発・周知(活動)→ 当事者が気づき相談する(中間の反応)→ 合意書面を作る・保証に加入する(行動)→ 養育費を受け取れる(成果)→ 子どもの生活が安定する(最終的な目的)。

この流れの各段階に指標を置けば、「どこまで進んでいて、どこが詰まっているか」が見えます。

先行指標(活動量):まず管理するもの

成果が出る前から動かせるのが先行指標です。日々・月次で追います。

  • チラシの配布数(離婚届交付窓口での同封数など)
  • 特設サイトの閲覧数・ユニークユーザー数
  • 無料電話相談の予約数・実施数
  • 無料シミュレーション「離婚の問診票」の利用数
  • チャイルドサポートサインによる合意書面の作成数
  • 養育費保証の加入数

これらは「ちゃんと届いて、行動につながっているか」を示します。たとえば「配布数は多いがサイト閲覧が少ない」ならチラシの内容や導線に課題がある、というように、改善のヒントが得られます。

成果指標(結果):四半期・年で評価するもの

最終的な成否を示すのが成果指標です。短期では動かないため、四半期や年単位で評価します。

  • 養育費の取り決め率(対象世帯のうち取り決めをした割合)
  • 養育費の受給率(実際に受け取れている割合)
  • 養育費保証の継続率(離婚後の支払いが継続している割合)

全国平均(受給率約28%、取り決め率46.7%)を出発点に、自分の自治体での改善を追うと、説明に説得力が出ます。

目標値(ターゲット)の置き方

指標を決めたら、次は「どこを目指すか」です。最初から高すぎる目標を置くと達成できず、低すぎると意味がありません。現実的なのは、全国平均を出発点(ベースライン)にして、自治体ごとの改善幅で目標を置くことです。

たとえば成果指標なら、全国の養育費受給率(約28%)・取り決め率(46.7%)を基準に、「対象世帯のうち取り決めに至った割合を◯ポイント改善」といった形で設定します。先行指標なら、「離婚届交付件数のうちチラシを受け取った割合」「サイト訪問のうち相談予約に至った割合(コンバージョン率)」のように、率で見ると年度間の比較がしやすくなります。事業初年度は、確からしい実績値がないため「まず計測体制を作り、翌年度以降のベースラインを取る」ことを目標にしても構いません。

四半期レビューの型

KPIは、設定して終わりではなく、定期的に振り返ってこそ機能します。四半期に一度、(1)先行指標の推移、(2)詰まっている段階(例:配布は多いがサイト来訪が少ない)、(3)次の四半期の打ち手、を一枚にまとめてレビューする型を作っておくと、改善が回り始めます。連携先とこの場を共有すれば、サイン作成数・保証加入数など連携先のデータも合わせて見られます。

陥りやすい測定の落とし穴

効果測定でつまずきやすい点も挙げておきます。一つは、成果指標だけを見て一喜一憂すること。成果は時間がかかるため、初期は先行指標で進捗を捉えます。二つは、計測体制を後回しにすること。データがなければ、後から効果を示せません。三つは、数字を集めて満足してしまうこと。数字は「次の打ち手」を決めるために使ってこそ意味があります。四つは、外部要因を無視すること。離婚件数の増減など、事業以外の要因も結果に影響するため、解釈には幅を持たせます。

測定の「土台」を最初に作る

指標を決めても、データが取れなければ意味がありません。クイックウィンとして、次を最初に整えます。

まず、特設サイトのGA4イベント計測。「無料相談予約クリック」「シミュレーション開始」「サイン作成への遷移」などをイベントとして計測できるようにします。これで先行指標が自動で見えるようになります。次に、窓口・申請データの集計ルール。チラシ配布数や補助申請件数を、誰がいつ記録するかを決めておきます。最初にこの土台を作るかどうかで、後の説明のしやすさが大きく変わります。

議会報告への落とし込み

測ったデータは、議会・庁内で説明できる形にまとめます。コツは、先行指標で「活動の手応え」を、成果指標で「最終的な変化」を語ることです。

事業初年度は、成果指標がまだ動かないのが普通です。その段階では「これだけ届け、これだけの当事者が相談・行動につながった」という先行指標で進捗を示し、「成果(受給率)は四半期・年単位で評価していく」と整理します。こうすれば、「効果が出ていないのでは」という問いにも、根拠を持って答えられます。

議会説明の材料は 議会・上司を動かす説明材料集、届ける施策は 制度を作っても使われないのはなぜか をご覧ください。

指標の早見表

設計の出発点として、代表的な指標を早見表にまとめます。自治体の事業内容にあわせて取捨選択してください。

区分 指標 見るタイミング 何が分かるか
先行 チラシ配布数 月次 接点の量
先行 特設サイト閲覧数・UU 月次 情報への到達
先行 無料相談の予約数・実施数 月次 行動への転換
先行 シミュレーション利用数 月次 関心の深さ
先行 サイン合意書面の作成数 月次 合意の成立
先行 養育費保証の加入数 月次 保証への到達
成果 養育費の取り決め率 四半期・年 取り決めの広がり
成果 養育費の受給率 四半期・年 実際の受け取り
成果 養育費保証の継続率 四半期・年 支払いの継続

「配布数(接点)→ サイト閲覧(到達)→ 相談・サイン(行動)→ 取り決め・受給(成果)」と上から下へつながっており、どこで数字が落ちているかを見れば、改善すべき段階が分かります。

データはどこから取るか

指標を決めても、データの取得元が曖昧だと続きません。主な取得元を整理しておきます。特設サイト系(閲覧数・相談予約クリック・シミュレーション開始など)はGA4のイベント計測で自動取得できます。窓口系(チラシ配布数など)は、窓口業務の中で記録ルールを決めて集計します。補助・申請系(補助件数・取り決め件数)は申請データから把握します。連携先系(サイン作成数・養育費保証加入数・継続率)は、チャイルドサポートと共有する形で取得できます。これらを「誰が・いつ・どこに記録するか」まで決めておくと、四半期レビューがそのまま回ります。

数字を「次の一手」に変える

効果測定の目的は、報告のためだけではありません。本当の価値は、数字を見て次の打ち手を決められることにあります。たとえば「サイト閲覧は伸びたが相談予約が少ない」なら、相談のハードル(予約方法・対応時間)を見直す。「相談は多いがサイン作成に至らない」なら、相談から作成への案内を強化する。こうして、測る→気づく→直す、のサイクルを回すほど、同じ予算でも成果が積み上がっていきます。

連携先と一緒に測る

効果測定は、自治体だけで抱え込む必要はありません。チャイルドサポートとの連携では、サイン作成数・保証加入数といった連携先側のデータも共有しながら、測定の仕組みづくりを一緒に進められます。「数字で語れる連携」にしておくことが、次年度の予算確保や、他自治体への横展開にもつながります。

全体像は 自治体の養育費確保 完全ガイド をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 養育費確保のKPIは何を設定すればいいですか?
先行指標(チラシ配布数・サイト閲覧・相談予約・サイン作成・保証加入)と成果指標(取り決め率・受給率・保証継続率)に分けて設定します。

Q. 先行指標と成果指標の違いは?
先行指標は活動量で短期に動かせるもの、成果指標は最終的な結果で表れるまでに時間がかかるものです。初期は先行指標を管理し、成果指標は四半期・年で評価します。

Q. どう数字で示せばいいですか?
GA4で相談予約クリックなどをイベント計測し、窓口・申請データの集計ルールを決めておきます。最初に「測れる土台」を作ることが重要です。

Q. 事業初年度で成果が出ていない場合は?
成果指標は時間がかかるため、初年度は先行指標で進捗を示し、成果は四半期・年単位で評価する、と整理して説明します。

Q. 効果測定は自治体だけで行うのですか?
連携先のデータ(サイン作成数・保証加入数など)も共有しながら、一緒に測定の仕組みを作れます。


この記事の著者:佐々木裕介(弁護士/株式会社チャイルドサポート 代表取締役。法務大臣認証ADR機関 第184号)

※本記事の全国平均値(受給率約28%・取り決め率46.7%)は令和3年度全国ひとり親世帯等調査(こども家庭庁)に基づきます。指標設計は一例であり、各自治体の事業内容にあわせて調整してください。